メタルフリー(金属を使わない)歯科治療とは?
金属を使用しない歯科治療=メタルフリー歯科治療
お口の中に金属の被せ物や詰め物をしている方は多くいらっしゃるかと思います。
虫歯治療をしたあとの処置で保険適用内の場合は一般的に『銀歯』と呼ばれる金銀パラジウム合金という素材の被せ物や詰め物で処置することが多い為です。
この金銀パラジウム合金は長年にわたって使用されてきましたが金属アレルギーや人体に与える影響があることから現在では日本でしか使用されていません。
また、歯科金属ガルバニー電流が発生することもありお口の中から金属を無くす『メタルフリー歯科治療』が安全とされています。
金属アレルギーとは?
金属アレルギーは日本人の約10人に1人が発症していると言われているほどの皮膚疾患で誰でも発症する可能性があります。金属アレルギーは主に「ニッケル」「コバルト」「クロム」が原因となり発症されることが多いとされてきましたが「パラジウム」「アマルガム」「スズ」もその原因とされています。
歯科治療で使用される金銀パラジウム合金は見た目が銀なので「銀歯」と呼ばれることが一般的ですがこの「銀歯」は正式名称を「歯科鋳造用金銀パラジウム合金」と言い、金12%、パラジウム20%(JIS規格)、あとは銀50%前後、銅20%前後、その他からなる合金で、保険治療の詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)として、一般的に広く知られ、使われています。
そのため、金属アレルギーの方が銀歯を入れるとお口の中で銀歯に触れる部分が炎症を起こしてしまったりお口だけではなく手や足に炎症が出る場合もあります。また、銀歯を入れてから原因不明の体調不良になったケースもあります。
保険が適用される歯科用金属とは?
■アマルガム
アマルガムは「歯科用水銀アマルガム」が正式名称で、無機水銀が含まれています。無機水銀は水俣病の原因となったメチル化水銀とは異なるものですがこの無機水銀も有機化するとメチル水銀に変質するため有害な水銀となる可能性があります。
アマルガムは厚生労働省が認めている金属ではありますが最近では金属アレルギーやアトピー性皮膚炎などの原因となっている場合もあると言われている為、アマルガムを使用した治療をおこなわない歯科医院も増えております。
しかし、現在でもこのアマルガムを使用して治療をおこなっている歯科医院は多くあります。アマルガムはとても変質しやすい金属です。特にお口の中は常に湿り気があり温かい為、劣化しやすいのです。また、熱い飲み物や食べ物がお口の中に入るだけでも溶けだしてしまう可能性があります。
その結果、溶けだした水銀の粒子や水銀の蒸気が体内に流れてしまい吸収されて脳や肝臓・腎臓に蓄積されてしまうようです。
■12%金銀パラジウム合金
12%金銀パラジウム合金とは歯の被せ物や詰め物によく使用される歯科金属の事を指します。1960年の戦後間もない頃にこの金属が保険適用と認められたことから日本では多く使用されています。しかし、この12%金銀パラジウム合金は日本でしか使用されておりません。なぜかというと『人体に悪影響を与える可能性がある』からです。当時は『銅亜鉛合金』を保険診療に組み込む動きがありましたが、人体にあまりにも悪影響があるとの見解でした。そこで歯科用金属規格委員会はこの金属に代わる安価な代用金属である「12%金銀パラジウム合金」を許容の限界として保険適用を認めました。ただし出来るだけ早く人体に影響の少ない「金合金」へ移行するべきだという事実を委員会報告書にて発表していました。しかし、そのまま時は経ち移行に関する動きは無くなってしまったまま現代にまで至っているのです。
「12%金銀パラジウム合金」は金12%・パラジウム20%・銀50%・銅16%・その他2%(亜鉛、インジウ、イリジウム等)で構成されています。ここに含まれる「パラジウム」はリンパ球幼若化テストという金属アレルギー検査で約半数の人に陽性反応が出ています。こういった検査結果から医療先進国であるドイツやスウェーデンでは保健省から歯科業界に対して「幼児及び妊婦に、銅を含有するパラジウム合金と、水銀・銀アマルガム合金を使用しない」という勧告を出すほどです。
■ニッケル・クロム合金
ニッケルアレルギーは人の汗の中の塩素イオンによってニッケルが溶けだすことで皮膚炎を引き起こします。また、皮膚炎だけでなく血液によって運ばれて汗の多い箇所に湿疹を引き起こすという事もあります。口腔内は唾液によって金属を溶かしてしまう性質がありますので簡単にアレルギーを引き起こす可能性があるのです。
クロムの化合物として一般的に広く知られているのが「3価クロム」と「6価クロム」ですがアレルギー性クロム皮膚炎を起こすのは「6価クロム」です。
クロムアレルギーの発症事例としては、皮の製品が皮膚に長時間触れている場合に汗の多い箇所である足や手首などに皮膚炎を引き起こすという事例があります。また、クロムは食品にも多く含まれている事があり、例えばビールや黒コショウにもふくまれております。
6価クロムはアレルギー性だけではなく、潰瘍の原因や発ガン性の疑いがあることから、EUを中心として6価クロムを排除する動きが起きており、日本においても対応が迫られています。
一方、使用済み自動車や電子部品のクロメート皮膜が、酸性雨により溶解して皮膜中の6価クロムが土壌に浸透し、ひいては地下水が汚染されて、生活循環により人体への悪影響が心配されるに至るようになりました。
また自動車産業やエレクトロニクス産業等においても、真剣に6価クロム代替の処理剤をはじめ、6価クロム規制対策に本格的に着手し始めています。このように6価クロムは発ガン性や接触アレルギーなどの問題から規制が厳しくなり、近年使用禁止になる傾向にあります。
■銀合金
銀合金は食器やアクセサリーに多く使用されることがありますが銀は酸素によって錆びやすく黒くなってしまいます。これを口腔内の銀歯に置き換えると歯ぐきが黒ずんでしまったり溶けだして体内に取り込まれてしまう危険があります。
銀合金に含まれる成分は「銀70%」、「亜鉛12%」、「インジウム13%」、「その他(スズ、ルテニウム、アルミニウム等)5%」となっております。そして金属アレルギーを引き起こしやすい代表的な金属は「水銀」、「ニッケル」、「コバルト」、「クロム」、「スズ」などが東京医科歯科大学歯学部アレルギー外来で歯科金属によるアレルギー発症を疑う来院患者 (5年間)にパッチテストによって高頻度でアレルギーを生じていることが明らかになっています。
ガルバニー電流とは?
ガルバニ―電流とは種類の異なる金属が触れ合った際に発生する電流のことを指します。銀紙やアルミホイルを噛んだ時にキーンとした経験はありませんか?これがガルバニ―電流です。上記のような現象は口腔内に金属が無い方には起きません。
例えばお口の中に金属の被せ物や詰め物を入れていたとすると唾液で電気の伝導性を高めてしまう為、1種類しか金属の被せ物や詰め物を入れていなくてもガルバニ―電流を発生させてしまいます。ガルバニ―電流が発生すると金属が錆びることを促進してしまいます。
また、この電流は様々な身体の不調を引き起こすと言われており、肩こりや頭痛、不眠、イライラするといった不定愁訴の原因となる事があります。
人の身体は脳や心臓が動くことで微弱な電流が発生します。脳はこの微弱な電流で身体をコントロールしている為、口腔内でガルバニ―電流が流れる事で脳からの指令が混乱してしまいます。上記の結果、身体のコントロールに影響が出てしまい不調へとつながります。お口の中の身体に合っていない金属の被せ物や詰め物を除去したところ多くの症状が改善された報告も多数あります。
メタルフリー歯科治療について
上記でご説明したようにお口の中に金属の被せ物や詰め物があることで様々なリスクがあると考えて世界的に歯科治療において金属の素材を使用しない『メタルフリー歯科治療』の流れが加速している傾向にあります。
現在では金属を使用しない歯科材料は昔に比べて豊富になってきています。代表的なものでは「セラミック」を使用した治療です。セラミックとはポーセレンと呼ばれる長石質、リューサイト、陶土等を混ぜて出来る素材の事で金属を一切使用しません。この素材のみで構成されるセラミックを「オールセラミック」と呼びます。その他にも金属を使用しない歯科治療は多数ありますので更に詳しく知りたい方は下記の項目よりご覧ください。